大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)3970号 判決

被告人 金鉄雄

〔抄 録〕

第一点について。

本件記録を調査すると、昭和二十七年七月二十一日宇都宮刑務所において行われた証人趙奉吉外一名の尋問の際、被告人がこれに立ち会つていないこと、当時被告人は東京拘置所に勾留中であつたことは所論のとおりである。

しかし本件記録によれば、原裁判所は昭和二十七年七月五日の公判期日において、検察官の請求にかかる、前記証人二名を昭和二十七年七月二十一日午前十時宇都宮刑務所において尋問する旨の決定をなし、次いで検察官の提出にかかる右証人二名に対する尋問事項書を被告人並びに弁護人に送達しておること前記宇都宮刑務所における証人尋問の際、被告人はこれに立ち会つていないが、弁護人はこれに立ち会い右証人両名に対し尋問をしておること、昭和二十七年八月二十一日の公判期日において、右証人尋問調書についてはいずれも適法に証拠調が行われ、その際被告人並びに弁護人より何らの異議もなかつたことを認めることができる。

刑事訴訟法第百五十七条第一項は被告人又は弁護人は証人尋問に立ち会うことができる旨を規定し、同条第二項第百五十八条は裁判所が公判廷外において証人を尋問することを決定したときは、その尋問の日時場所を被告人又は弁護人に通知し、その尋問事項をも知る機会を与えなければならない旨規定しているのであるが、上記のように公判期日において、裁判所外における証人尋問並びにその日時場所について決定をなし、その後尋問事項を通知した以上、被告人は勾留中においても自らその尋問に立ち会い、証人を尋問しようと思えば、その旨を裁判所に申し出て証人尋問の日時場所に被告人自身の召喚を求めることもできる訳であるから、これによつて、被告人に対しては右証人尋問に立ち会う機会を与えたものといいうるのであつて、裁判所としては、被告人が勾留されているからといつて、更に進んで右証人尋問に立ち会うか否かを問い、被告人がこれに立ち会わない旨の意思を表示しない限り、被告人を現場に出頭させ現実にこれに立会わせなければ被告人の立会権を害し、前記刑事訴訟法の規定の趣旨に反するものと解すべきではない。本件において、被告人(又は弁護人)から被告人自ら前記証人尋問に立ち会いたい旨の意思を表示した形跡は認められないから原裁判所が被告人を前示証人尋問の日時場所に召喚しなかつたことは違法ではない。又公判廷外における証人尋問期日に被告人が立ち会つていなくても弁護人がこれに立ち会つていれば、被告人の証人尋問権は確保されたものとして、憲法第三十七条第二項の規定に反するものでないことは判例(昭和二四年(れ)第一、八七三号昭和二五年三月一五日最高裁判所大法廷判決)の示すところである。これを要するに、原審の手続には所論のような違法はなく論旨は理由がない。

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